墓の中から

クソリプガイジの墓場

「辺獄のシュヴェスタ」という、世界があったかもしれない

辺獄のシュヴェスタ」の5巻を発売初日に買いました。

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 間違えて2冊買っちゃったんだけど、作者の竹良先生に印税が入るし、次に面白い作品を生み出す糧になればなあ……とニートが思っています。

 

 とにかく、ストーリーが、めちゃくちゃに面白い。作画が粗いとかいう声もあるけど、それすらも魅力に思えてくる。物語の構成が素晴らしく緻密で、伏線の回収は読んでいて気持ちがいい。後味悪いのとか、血や暴力が苦手は人は、見ない方がいいかもしれない。物語でアッと騙されてみたい! とかいう人にはピッタリ。

 

 

 

 どんな話か簡単に言ったら、主人公のエラは、愛情をもって育ててくれた人を教会の人間に目の前で殺されて、教会を相手に復讐するっていう話。

 

 

 これも、ただの復讐劇ではない。背景には昔にあったであろう「魔女狩り」が存在している。

 教会は「魔女狩り」っていって、薬草とかを研究してる賢者を殺すんだけど、なぜかっていうと、「病気の原因は何か」なんて庶民は知らなくてよろしい、ということ。

 

 教会が知識を独占していれば、「病気の原因は〇〇ですね」とわかるし、庶民はそれを「神の力」と信じる。だから、神を信じさせるために、庶民には無知でいてもらわないと困る。これ、今の社会にも通じてそう。

 

 

 

  で、「魔女」の子どもたちを集めて、修道院で強制労働をさせるんだけど、本当にえげつない。教会に完全に洗脳されるように、毎日の食事に麻薬を混ぜたり、逆らう者は理由をつけて殺すことも厭わない。アメとムチで、徹底的に、絶対服従を教え込む。

 

 でも、服従をはねつける者がいる。主人公のエラである。また、ここに、カーヤ、ヒルデ、テア、コルドゥラが加わる。教会に反発する者や、脱出をしたい人間たち。

 

 この5人も、「教会側じゃない人間、この指とーまれ!」ってぱっと集合できたわけではない。なんせ、労働中や食事中も教会に厳しく監視されてる。

 

 そんな中、テアが抜け道を見つけ出して、それに気づいたエラたちが仲間になる。

 

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 この、抜け道に彫られている「ヘルガ・フォイゲン」も、5巻でちゃんと伏線の回収がされている。本当に素晴らしい。無駄な言動がひとつもないんだよなあ。

 

 

 エラたちは、院を脱出できる方法はないか、院にいながらも教会に復讐できる方法はないか、って毎日考えてた。洗脳されるから薬入りの食事を吐いて、森で狩りなんかをしながら空腹をしのいでいた。

 

 

 で、下のシーンは、ひとつ上の学年のコルドゥラが、カーヤと仲間になるシーンなんだけど、砕いた木の実や昆虫を蜂蜜で練って固めてある」食べ物が、私が今日、自然食品のお店で食べた「どんぐりクッキー」と同じだったのである(昆虫以外)。

 

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一致?

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 「カーヤもこういうのを食べて空腹をしのいだのか……」と、物語の世界に触れた気がして嬉しくなったキモオタの、チラシの裏にでも書いてればいいようなことです。だけど、これを食べると、強くなれる気がする。

 

 でも、コルドゥラも5巻で死んじゃうんだよな……。ネタバレで知ってたけど、死ぬまでに、ものすごい意味を残している。

 

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 コルドゥラは、エラたちよりも学年が1つ上なんだけど、昔は同じく脱出組の仲間がいて助け合ってしのいでた。でも、コルドゥラだけが生き残ってしまう。コルドゥラは、漫画の中でも、「どうして私なんだろう、って思ってた。私だけ生き残ったのも」と独白している。

 

 しかし、コルドゥラは、折檻されながらも、外にいるエラに向かって、情報を伝え続けた。協会に一矢報いるためのバトンを、エラたちにつないだのである。

 

 そして、最期の言葉は、こうである。

 

「人間は、偶然生まれ、生きた後に、意味ができる……去年の仲間達から引き継いだもの……私は、確かに、繋いだわよ。エラ!

 

 エラたちに自分の命をたくして息絶えたコルドゥラは、自分の使命をやり遂げたような、悔いのない表情をしている。

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そして、コルドゥラが命がけで伝えてくれたことを、仲間に話すエラ。

「コルドゥラが死んだんだ! そんな話は後でいい!」というカーヤに、

 エラは、「万が一、私に何かあったら、コルドゥラが命懸けで伝えてくれたことが、無駄になる……だから、今話す」

 

 

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「命のバトンを次につないでいく」って、種の反映の意味ではなくて、誰かに邪魔をされても、褒められることでもなくても、自分の意思を誰かに受け継いでもらうことなんだなと考えさせられた。

 

 エラは、「体の自由は奪われても、私の意思までは奪えない」というようなことを漫画の中で言っている。

 

 今、私がこうやってブログで自分の考えを発信できるのも、過去に、言論の自由を奪われて戦ってきた人がいるからだ。勝ち取りに行く人間は強い。しかし、勝ち取られたそれの後ろには、多くの屍が積みあがっているだろう。過去に戦ってくれた先祖の恩恵を受けて、私は暖房のきいた部屋で引きこもりながら世界に言葉を発信する。

 

 

 

 

 ちなみに、私が好きなキャラクターはクリームヒルです。ビジュアルが好き。あと、人を殺すことも何とも思わない、教会に従順な頭のキレるサイコパスっぷりも、悪役って感じで好きです。

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 次の6巻で最終巻のようです。以下のサイトで、1話を無料立ち読みできるみたい。面白いのは1話以降なんだけど、気になったらアマゾンか何かで買ってみてください。竹良先生に印税を納めましょう。